会計専攻の人が次の お寺 の情報開示を考えてみた

お寺 の情報開示

みなさんは、 お寺 がやっていることに対して、「え?これって…」と思ったことありませんか?地主業もやってるけど、それも税金かからないの?とか、最近出てきたお坊さんが作った電気小売業ってあり?とか。

そんな疑問に答える、コミュニケーションの手段が情報開示です。そこで、今回は、 お寺 の情報開示について、書くことにしました。というか、大学の頃の卒論でも書いたので、そのころになかった情報や考え方、さらには実践例を取りあげて、充実したコンテンツで書き上げたいと思います。

まず、お寺がすべき情報開示について、概念を整理したいと思います。なぜなら、情報開示にもいろんな種類が存在し、いろんな目的に対応するべきだと考えているからです。

普段、お寺の情報開示としては、どういうもの、誰に向けて配っているでしょうか?

ほとんどのお寺が「お寺の行事や講中の告知について書いたもの(+コラムのお寺もあります)を、檀家に向けて配っている」とお答えするかと思います。

目的としては、檀家さんに、こういう行事があるのでご協力・ご参加お願いしますね~というものがほとんどかと思います。というか、私の実家のお寺はそうでした。

それが良い悪い、という話ではありません。

ただ、「お寺さんよ、もっと有効活用したらいいのにな」と思ったのです。

過去、卒業研究の際に、宗教法人の信者数TOP30のウェブサイトを、「情報開示がステークホルダーに対して有効か」を基本軸に調査を実施しました。

情報開示がステークホルダーに対して有効か」というのは、宗教法人が出した情報に対して、例えば信者さんがその情報を見て「あ、この宗教法人には寄付しても良いな」と判断できるような情報が開示できているかどうかを指します。

具体的な例として「うちの宗教法人では宗教を通じてこういうビジョンを持っていて、それをどのように実行していき、さらに目標の数値計画」まであれば、完璧です。

しかし、だいたいの場合は要素がところどころ不足している場合が多く、残念な結果だったのを覚えています。

例えば、檀家さんにとって、「仏教のこういう知識が役に立ちますよ」とか、お寺にきた方に、「うちのお寺はこういう由緒があるんですよ」とか、活用しがいがいくらでもあるツールなのです。

事例をあげれば、ウェブ上ではありますが、お寺の住職の息子がコーチにビシバシ鍛えられているという個人的な話から、お寺との付き合い方の話につなげる、みたいな話、日常に染まっていていいと思います。お寺のお坊さんも人間ですから。

>>>お坊さんがもっとキャラを出していこう、という話はこちら

さて、話題を戻して、お寺がすべき情報開示について、基本の概念を整理、というか説明していきたいと思います。

今回はIR(Investor Relationship)についてです。

“IR”とは

presen

普通の人は聞きなれないであろう言葉が出てきました。”IR”です。そもそも、”IR”とは何の略でしょう?

とりあえず、ググってみました。というか、ウィキってみました(これって、死語ですか…?)

インベスター・リレーションズ(英語: Investor Relations, IR)とは、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動をいう。日本では「投資家向け広報」とも日本語訳されているが、IRという頭字語も定着している。

Wikipedia「インベスター・リレーションズ」の項目

…はい。横文字の説明に漢字の熟語で翻訳された文章が出てきました。

しまさんが翻訳すると、「投資してくれる人向けに、投資してくれる人用の情報を作り、公開すること」です。なので、2つパターンがあります。

1つ目は、「投資してくれるかもしれない人が、投資する!と決めるための情報」です。専門用語でいえば、情報開示における「投資意思決定有用性の高い情報」と言います。例えば、とある会社に投資しようとしたときに、株価や株主優待、人によっては会社の倒産リスクについて調べるときには、その該当する情報を見ることになります。

具体的なパーツとして、

  • その会社は、どのような目的で動いているのか?どのような活動をしているのか?
  • その会社は、本当に投資して大丈夫か?来年にはなくなってしまっていないか?
  • その会社は、投資してくれた人に対してメリットは何があるのか?

などが挙げられます。

2つ目は、「投資してくれた人が、投資の結果どうなったかを確かめる情報」です。投資家は、投資した分、利益を出しているかをチェックし、その情報をもとに、「将来伸びる!」と判断して買い足したり、「もうヤバイかも」と判断して売り切ったりすることができます。これも投資意思決定ですが、投資後、どのように会社が良くなったかは比較しなければ判断しようがありません。

具体的なパーツとして、

  • その会社は、設定している目的をどのくらい達成しているのか?
  • その会社は、投資の結果どのくらいの利益や価値を生み出したのか?

などが挙げられます。

そのため、情報は「比較可能性」がないと有用性が低いとされます。それは、期間や組織別で表現が違いすぎると、比較しようがなくなってしまい、後者の「投資の結果どうなったか」が分からなくなってしまうからです。

さて、お寺の場合はどうでしょうか?

お寺 の”IR”

お寺のお坊さん

このようなことを考える際に必ず必要になるのは、関係性がどうなっているか、です。

IRは名前の通りInvestor(投資家)がいないと成立しないので、Investorを想定する必要があります。

しかし、お寺のInvestorは、実は株主のように定義しにくいのです。なぜなら、「株式」という概念が存在しないからです。なので、配当を受け取ることもないし、檀家の権利を売ったり買ったりはできないのです。また、株式会社は解散するときにその株式保有者に対して配分を与えるのですが、お寺の場合はその配分もありません。

どうしてかというと、お寺では、投資じゃなくて「寄付」をすることになるからです。つまり、モノでもカネでも、お寺に「これをぜひお寺のために使ってください・・・!」というものは、投資、ではなく寄付ととらえられるのです。そのため、寄付をした人すべてがInvestor(投資者)になるのです。(正しくはDonorになるのですが、IRという言葉にそぐわないのでそのままいきます)

では、お寺はそんな寄付をしてくれる方にどのようなIRを提供すべきでしょうか?先ほどの2つのパターンを参考に考えてみましょう。

1つ目は、「投資してくれるかもしれない人が、投資する!と決めるための情報」です。言い換えると、「お寺に対して、何かかしらの寄付をすると、何がメリットか」を表現すればよいのです。

お寺の例で考えてみます。

このお寺は、こういう方向性で活動していきますよ!」とか「お寺に寄付していただくと、柱などに個人名もしくは法人名を刻みますよ」とかが考えられます。前者があることで、お寺の方向性や目標(ビジョン)や地域への貢献をどのようにするか、など寄付する人や檀家さんがその方向性に対して評価してくれるでしょう。後者であれば、宣伝効果があるかもしれません。この好例が伏見稲荷で、鳥居には全国の会社や個人の名前が刻印されています。神様への奉納だけでなく、宣伝的な意味もあります。ついでにいうと、寄付控除といって、税金対策にもなります。ブロガーやインフルエンサーに広告を依頼する場合がありますが、同じような効果をお寺の柱などに刻んでいたのです。もちろん、奉納という意味でもありますが。

あと、お寺の場合は、お供物という形式もありますね。檀家さんは寄付をお金に限らず、食べ物などをお渡しいただく(お供物ですね)こともあります。それは、お寺に対して、というより、お寺に祭られているご本尊様にお供えし、お経をお坊さんに唱えてもらうことで、自分や家族、お店などのより一層の幸せを祈るための寄付になるのです。そのお経は、お坊さんが唱えるのだから、お坊さんがいただくもので問題ないわけです。なぜなら、それはお寺の本尊を守るという役割に対する対価といえるからです。

2つ目は、「投資してくれた人が、投資の結果どうなったかを確かめる情報」です。言い換えると、「お寺に寄付していただいて、どういう活動をして、どういう価値を提供しているか」を表現するのです。

お寺の例を取りあげると、「寄付していただいたこちらのお金は、お寺の設備をよりよくするために使いました」とか「寄付をもとに、こういうイベントを行い、○○人来ていただき、「自分の人生を見直すのによい機会だった」といっていただいております」とかですね。

イベントだけでなく、普段使ってもらっている檀家さんに、お坊さんを評価してもらうという手法も可能です。満足度や声を見せているお寺さんもないでしょうし(笑)

この2点の情報を、A4を2枚とかでも書いていただくだけで、劇的に変わります。お寺のビジョンをしっかり書いているお寺は少ないでしょうし、お寺に寄付するメリットをちゃんと書いているところなんてそこまでないはずです。

ただ、残念ながら両者をしっかり開示しているお寺さんはまだまだ少ないです。せっかく、寄付やお供え物をいただくのであれば(いただきたいのであれば)こういう情報開示を意識するのはいかがでしょうか?活動も違ったものになってくると思うんです。

さらにいうと、情報開示をすることで、寄付者もしくは檀家さんと「これいいですね!」とか「こういうことやらないんですか?」とかのコミュニケーションが発生するので、ぜひ実施していただきたい、切に思います。

NPOの事例

お寺以上に、「情報開示が強制されている」法人の種類の一つに、NPO法人があります。かなり良い先進事例ともいえるので、覗いてみましょう。

今回は、認定NPO法人D×P(以下、NPO法人ディーピー)様の例を取りあげてみます。

NPO法人ディーピー様は、不登校やひきこもりなどで、全日制の高校ではなく、通信制や定時制の高校に通っている高校生と高校生や社会人をつなげる活動や、進路相談を行っている組織です。

そんなNPO法人ディーピー様を、2つのパターンにはめて分析してみましょう。(参考文献はこちら

1つ目は、「投資してくれるかもしれない人が、投資する!と決めるための情報」でしたね。

先ほど提示したパーツをもとに、分析してみました。

  • その組織は、どのような目的で動いているのか?どのような活動をしているのか?

まず、どのNPOでも会社でもそうですが、どのような目的で、どのような活動をしているかを明示しておくべきです。

NPO法人ディーピー様は、「D×Pの大切にする姿勢」として「人の可能性をあきらめない」「自分が納得のいく仕事をする」ことを置いています。

NPO法人D×P-2017年度活動報告書より

これは、NPO法人ディーピー様の組織としての姿勢とともに、所属するすべての人(職員、ボランティアすべて)の姿勢として明示しています。組織はこの目的に照らし合わせて、目的や活動を定義していきます。

そこでもって、NPO法人ディーピー様は、具体的には通信制や定時制高校に通っている高校生に希望を持ってもらう、という目的で、社会人をつなげる活動や、進路相談を行っています。

ディーピー様活動説明

NPO法人D×P-2017年度活動報告書より

さらに、目的(この場合は解決したい問題点)として、全日制高校生徒と通信制高校生徒の進路未決定率や定時制高校の生徒の中退率を取りあげています。このように、数字も併記すると、問題点や活動目的を明確にしやすい場合があります。

  • その組織は、本当に投資して大丈夫か?来年にはなくなってしまっていないか?

こちらは、一番有効なアプローチとして、「財務状況の報告」が挙げられます。また、現状どのくらいの寄付者がいるか、どのくらいの活動人数がいるかを明示することでも十分表示可能です。

  • その組織は、投資してくれた人に対してメリットは何があるのか?

寄付の特典

NPO法人D×Pウェブサイトー寄付をするページより

こちらは、シンプルに明示している場合が多いです。NPO法人ディーピー様は、

  • 最新の活動報告書とオリジナルステッカーの進呈
  • 寄付者限定メルマガの購読
  • 寄付者限定のSNSグループに招待

最初の1つ目は、株式会社の報告に近いものですが、ステッカーの進呈というところが現代風ですね。PCにも貼れますし。

2つ目は、活動報告+コラムのような形式と考えられるのですが、NPOを身近に感じるには良いツールだと思います。

3つ目が一番現代風かつ有効なリターンに感じます。寄付者と寄付者の間、寄付者とスタッフの間をつなげる、ということなのですが、つながりが欲しい、話したいという現代人の求めるものにフィットしているようです。

このように、メリットは「明示しておく」ことがかなり重要といえます。

さて、2つ目は、「投資してくれた人が、投資の結果どうなったかを確かめる情報」でしたね。

先ほど提示したパーツはこのようなものでした。

  • その組織は、設定している目的をどのくらい達成しているのか?

設定している目的の達成度は、下記の価値を生み出すことと近い気がしますが、あくまで「設定した目的にどのくらい達成できているか」であります。

なので、より戦略と今の動きと今までの動きを見ることになります。NPO法人ディーピー様では、2017年に高校卒業後のサポート事業を始めて、「つながりをつくる」だけでなく、より高校生が「いきる仕事を作る」ことに挑戦しています。それがどう評価されるかは情報を見た側の判断となります。

  • その組織は、投資の結果どのくらいの利益や価値を生み出したのか?

こちらは、より数字ベースの問いかけとなります。NPO法人ディーピー様の場合は、アンケートなどを活用して、実際にプログラムに参加した生徒がどう変化したか、を測定しています。例えば、2017年の数値として、

進路未決定率が全国値と比べて大幅に低下

数値的変化

(全国の通信制高校=39.8%、全国の定時制高校=11.1%に対し、該当プログラム導入校=6.8%)

と出ています。これを価値と判断するかは情報を見た人しだいとはなりますが、逆に言うと「私たちの組織はこういうことを価値にしています!」という明示ともなるのです。

以上、NPO法人ディーピー様を参考に、情報開示の先進事例を分析してみました。

まとめ:お寺も寄付する人を意識しよう

ここまで、お寺は寺報をどう使っていますか?という問いかけに始まり、IR(Investor Relationship)の説明、お寺のIRはどうすればよいのか、そして実際の事例を分析し提示しました。

寄付する人を意識する、というのは簡単なものではありません。寄付する人ってどんな人?ということを考えなければいけません。「近所の人」程度じゃだめになりつつあるのです。

だからでこそ、変わる大チャンスでもあるのですが、誰を相手に情報開示するのか、というのは非常に重要となってきます。

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