お寺 に地域・市民参加の場を作ろう【#FRJ2019】
ここ最近、お寺さんにお伺いしたり、お寺の関係者の話を聞いたりしていると、「自由に参加できるボランティア活動をしてみているけど、一向に人が集まらない!」というお声をいただきます。
お寺のイベントは、明らかに一時期よりも増えた気がしますが、個々の参加人数は正直言って少ないモノが多いのではないでしょうか。
特に、清掃ボランティアとか、最近の流行であれば #Templemorningとかが挙げられますが、いわゆる「ボランティアとしての参加型活動」への参加者を集めるのに苦戦しているのではないでしょうか。
今回は9月にあったファンドレイジング・日本(FRJ2019)で聞いてきたセッションから、「お寺でのボランティアや市民参加の促し方」を考えてみます。
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もくじ
NPOにおける「市民参加」
本来、NPOでは「市民参加」が重要と言われています。
それは、ルーツが「市民活動」だったから、本来は「市民によって作り上げる地域社会の活動」であったわけです。
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例えば、NPO法人グリーンバードさんは、多くの地域住民が参加して、ゴミ拾い活動をする、というシンプルな活動を成立させています。そもそも、たくさんのボランティアがいないと成立しない活動であって、それは遠方から来るんじゃなくて、あくまで「地域の市民」が参加して、その「地域の市民」によって街を美化する意識を持ってもらいつつ、その市民間の交流を楽しんでもらう、という型ができています。
では、市民参加すると何がメリットなのでしょうか?
市民参加によるメリット3選
市民参加が増えることによるメリットが3つあります。
〇団体視点からは「多様な個性や能力をいただけやすくなり、一方で共感でつながることで同根異才のメンバーが集まる」
〇参加者の視点からは「参加することによる社会への役立ち感、自己肯定感が生まれて、いわゆる主観的幸福度が高まりやすい」
〇社会の視点からは「その社会課題への取り組み人数が増えるだけでなく、関心が高まり、自分ごとにしてくれる人が増える」
この3つが言えます。
団体視点から
団体としては、ボランティアには何かをやらせる、というよりも「こういうことが私できますよ~」を活かしてもらえることが大きなメリットです。なので、ある程度活動内容と活動の方針を伝えて、自由にやらせることで、参加者側も楽しくできます。特に、共感でつなげるために、「団体の考え方」や「団体の描く未来像」は明確に打ち出すことが必要です。
参加者視点から
参加する人としては、「こんなことしてみたい」を実現できるとともに、「社会課題に取り組んでいる」という体感をしやすくなります。
自分が担い手になっている、社会の役に立っている、という感覚ですね。
社会の視点から
そして、その「社会課題に取り組んでいる」感覚を、人に教えたり、発信したりすることで、社会課題を自分ごとにしてくれる人が増えます。
そして、その社会課題に取り組んでくれる新しい人が増えてくる、連れてくるという好循環が生まれます。
メリットはざっとこんな感じですが、では、実際に市民参加をしてもらうコツについてもお伝えいたします。
これからは「あそび」の時代
どうしても「ボランティア」活動というと、「正しい活動」や「まじめな活動」「意識の高い活動」と聞こえがちですが、そのように聞こえてしまっていることで、参加人数が減ってきています。
実際に、NPOへのボランティア参加意欲についてのアンケートでも、減少がみられています。
また、皆さんの実感でもあるとはずですが、「強制でやらなきゃいけない市民活動は、きついし大変なだけ」と敬遠されていると思います。例えばPTA活動とか、学校が参画しているボランティアとか。
その一方で、「楽しければ率先してやるよね」とはいえるのです。
エピソードで想像してみよう
ちょっとエピソードで想像してみましょう。
あなたが「地元の祭り」のお手伝いをお願いされました。もちろん、ほかに遊びたいことがあるのに、です。でも断れなくて、参加することになりました。
それは、「ほかの遊びの方が楽しい」から、あんまり気が向かないのです。
あなたには、お祭りの中の「ソースせんべい」のブースを任されました。
と同時に、こんな言葉をもらいました。
「困ったことがあったら、すぐ言ってちょうだいね。」
「ひとまず、ここにソースとせんべいは用意しておくから、あとは任せるね。」
そういわれたので、とりあえず売り方を考えてみようと思いました。
「祭りが楽しければいいのよ、楽しんでね!」とも言われていたので、楽しくやるにはどうするんだろう、と考えました。
ふと、ソースせんべい売りでやっていた方式を再現できないかなあと思い、作ろうと思ったので、その旨をいうと、「そういえば大工のAさんが、そういう木工も得意だったな」といわれて、呼んでくれたところ、すぐに作ってもらえました。売り場はこれでよさそうです。
次に、ソースせんべいの商品をどうしようかなと思いました。現状あるのはあんことチョコソースだけ。甘いもの×2だとなんか味気ないので、塩味系のサルサソースとチリコンカンを用意してみました。
いざ始まってみると、あんことサルサはよく売れましたが、ほかはそこまで売れませんでした。ちょっと失敗しちゃったなと思い、お祭りが終わってから、謝りに行くと「全然いいよ!また別の機会でチャレンジしてみればいいと思う!」と受け入れてもらえました。
今度こういう機会があるときは、またチャレンジしてみようと思うとともに、次も参加してみようかな、と思いました。
楽しければやる:楽しいのポイント
こんな感じで、「楽しければ、ボランティアもやりたくなる」ということが言えるのです。
ただし、下記の2つのポイントが重要です。
「困ったことがあったら、すぐ言ってちょうだいね。」:安心の保証
「ひとまず、あとは任せるね。工夫してみて。」:工夫の余地
何もかも、指示とか指導とかばっかりだと、息苦しいし、やりたくないですよね?
だから、「安心して、やってもらう環境を作る」「工夫してもらって、失敗してもOKだということを伝える」の2点を実施していくと、ボランティア活動も楽しいものになってきて、参加者が自然と増えるものになっていきます。
ボランティア活動にも「あそび」を
これが、ボランティア活動において「楽しいボランティア活動を作ること」であり「あそび」の要素を作っておくことでボランティア活動が活性化するヒントになります。
市民の参加が重要だからでこそ、がちがちの活動ではなく「あそび」がある活動にした方が、参加する側も楽しいし、参加しようとしてくれる人が増える、結果盛り上がる活動になりやすいです。
お寺における「市民参加」
ここまで、NPOにおける、「市民参加」についてお話しましたが、では、そのポイントをお寺で進めるにはどうすればよいのでしょうか。
もう少し、お寺向けに再構成した形で、「お寺のボランティア活動を活性化させるために、どうやって市民の皆さんに参加してもらえるようになるのか」それを考察してみようと思います。
お寺への参加には、ステップがあります。具体的には、下記のような図のようになります。
①檀家さんに参加してもらう段階
お寺には、ほとんどの場合、すでに総代さんや檀家さん(信徒さん)がいらっしゃいます。まずは、そのお檀家さんに参加してもらえるようにお声がけする+コンテンツを作る、ということが重要です。
なぜなら、「まずはお金を出してでもお寺に参加したい方を満足していただく」ことが重要だからです。また、檀家さんもひとりの地域の市民ですから、まずは一番お寺に関心を持ってもらえている層に、ボランティア活動の楽しさを伝え、協力していただく、サポーターになってもらうことがキーポイントとなります。
そのためにも、総代さんや檀家さんの集まりで、「こういう活動をやってみたい」と声をかけることからスタートして、まずはテストで参加してもらいましょう。
ここでの注意点は先ほど挙げた「困ったことがあったら、すぐ言ってちょうだいね。」と「ひとまず、あとは任せるね。工夫してみて。」の2つです。
そうです、お手伝いいただくときは、指示をするより、自由にやっていただき、困ったことがあったらすぐにお声がけいただき、一緒に進めていただく、というのが一番です。こちらを忘れずに。
また、そのお檀家さんの集まりではどんどん意見を吸い出しましょう。
お檀家さんとしてお越しいただいている方から、多様な考えや知見をもらい、お寺のこれからを一緒に考えてもらう、という考えにスイッチしていくと、今後のボランティア活動やそれ以外のイベント開催や法要、場合によっては改築するときなど、多様なお困りごとの答えをいただける可能性があります。どんどん経営参画していただきましょう。
例えば、最近はやりの、「#templemorning」も、テストマーケティングの一環として、まずはお檀家さんに参加してもらい、フィードバックをもらいましょう。
②檀家づてに広げていく段階
次の段階は、檀家さんやよくお参りに来る人づてに来ていただき、活動に混ざってもらうことです。
以前書いた「お寺 を”ジモト”に開き、かかわりしろを作ろう【お寺視察レポート】」では、もっと広くかかわろう、という話をしましたが、同様にボランティア活動のようなライトな活動を始める場合もひたすらツテを活用する流れになります。
お寺さんとしても、お檀家さんとしても「いきなり知らない人が来る」のは非常に抵抗感があるかと思います。であれば、まずは「顔見知れる範囲」から参加してもらうようにしてみましょう。
そして、その人たちからもアンケートなどで活動の感想やフィードバックをいただき、さらに磨きをかけましょう。くわえて、この段階では「そのボランティア活動でどうしたいのか」を参加者に伝えると、より参加者が役に立っている感覚を持っていただけます。それが長期的にはお寺の信徒さんになる可能性もあるので、非常に重要となってきます。
同時並行で、活動報告の発信もこの辺で開始しましょう。いまは活動報告を、ウェブサイトを新たに費用をかけて作らなくてもできるようになりました。
主に下記の2つのツールがおすすめです。投稿画面を活用して、どんどん発信しましょう。ツイッターやFacebookなどのSNSがなくても、十分発信できます。
〇ホトカミ
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③さらに多くの市民参加へ
檀家さんつてに人が集まり始めたら、いよいよ、そこから先の市民の皆様にも開いていきます。
この時には、なるべく発信していくことが重要です。なぜなら、「発信しない限り誰もそれを知らないから」です。
NPOの寄付先を探す中で、そのNPOに今まで寄付していなかった理由No.1は「知らなかった」だそうです。
だから、もっといろんな人に活動に参加してもらえる形ができてきたら、あとはひたすら広めていくことです。
オンラインでもオフラインでも、来ることが歓迎であることを記載することで、いろんな方が入るようになります。まさに「市民参加」。
具体的な活動の話についてはまた別の記事で書きますが、こんな流れで進めていくと、お寺の活動に市民が参加するようになっていきます。
これから、「お寺を開いていきたい」というお坊さん方にはぜひ真似してみてほしいです。
まとめ「 お寺 は市民参加を通して開かれる」
ここまで、ポイントをいくつか書いたので、まとめます。
〇お寺さんはもっと「市民参加」をしてもらうことで活性化しよう
〇「安心して、やってもらう環境を作る」「工夫してもらって、失敗してもOKだということを伝える」の2点を心掛ける
〇まずは檀家さん、次は檀家さんのツテ、最後は地域住民すべて、と段階的に対象を広げていきましょう
加えて、最後に伝えたいのは、お寺に檀家さん以外の人を入れていくためには、お金の関係よりも、お寺と一緒に過ごしてもらう時間を作ることが必要だということです。
お寺さんのイベントは参加してみたい人が多い
お寺さんがやるイベントに参加してみたい、という声は多いのです。
実際に、2009年の第一生命の調査によると、お寺に訪問した理由のうち、「お寺の行事に参加」した人は全体の14.5%もありました。
また、「寺院で参加してみたい行事」を3つ選択で選ばせた項目では「どれにも参加したくない」と回答した人は18.3%にとどまりました。
つまり、お寺でイベントをやれば、どれかには参加したいという人が多いのです。事実ベースで。
だから、お寺と一緒に何か社会貢献活動をしてみたい層も確実にいるといえます。
「市民参加」の視点で、新たにお寺を開いていくのはいかがでしょうか。
僕のツイッターは下記からどうぞ。
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#お寺をアップデート の活動のために、お寺さんに行くお金、発信のために使わさせていただきます!
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— しまさん@お寺をアップデートしよう (@shima_sun_0) 2019年5月18日
1995年神奈川県川崎市のお寺生まれ。中高は全寮制男子校に6年間通い、その後横浜国立大学経営学部にて「宗教法人の情報開示 ~公益性の観点から~」をテーマに、ソーシャルセクターの中の宗教法人の情報開示を、公益性・社会性の観点から評価し、開示する方法を研究。その後はコンサルティング会社で働きつつ、「#お寺をアップデート」を合言葉に、お寺をソーシャルグッドな存在にするための方法や、お寺のこれからのカタチを発信している。また、実際にお寺の現場に訪問し、お寺のアップデートを実際に手伝うことも。詳しいプロフィールはこちら>>
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